失注とは受注の反対語で、営業的なアプローチをかけて商談や提案を行ったにもかかわらず、成約につながらなかった、受注までこぎつけたもののキャンセルを食らってしまったことをいいます。
失注をしてしまうとそれまでの営業活動の時間やコスト、労力が無駄になってしまったような気になってしまいますが、意気消沈ばかりもしていられません。というのも失注理由を客観的に分析する必要があるからです。
その失注の理由は何だったのか?次に教訓として生かせるものはあるか?そんな視点で失注の理由を分析することを習慣づけましょう。
主な失注の理由とは?
失注には、3大理由といえるものがあります。その3つとは、コスト、商品・機能、そして営業力です。1つずつ紐解いていきましょう。
コスト
3大失注理由のうち、最も多くの失注に関わっているのがコストでしょう。コストは営業サイドの努力だけではどうにもならない部分もあるため「仕方ない」と流してしまいがちですが、コストをカバーできるだけの「何か」が無かったともいえます。
コストだけの競争だと値下げ競争に巻き込まれてしまいますが、コストパフォーマンスの競争であれば値下げをしなくても商品力や提案力、対応力などで戦うことは十分可能です。
商品・機能
どんな商品やサービスにも競合他社があります。他社と比較して商品や機能などスペックで勝てていないのであれば、いかに営業サイドが頑張っても失注につながる可能性は大いにあります。
商品力といっても単に商品の性能だけでなく納期、サポート力など総合的な「品質」で勝てていなかったのであれば、その失注から学ぶべきことは多いでしょう。
営業力
営業サイドにとって失注の理由が営業力不足であるというのは耳が痛い話ですし、「自分たちは努力した」との自負があるのであれば認めたくない部分かもしれません。単なる営業力やプレゼン能力の問題で失注したのであれば分かりやすい失注理由ですが、問題は努力の方向そのものが正しくなかった場合です。
営業は相手のある職業なので、相手に合わせて柔軟にアプローチを使い分ける必要があります。相手が忙しい人で「資料を送っておいてほしい」といっているのに何度も電話攻勢をかければ煙たがられるでしょう。しかし営業マン本人にとっては「あんなに電話を入れて頑張ったのに」となってしまうかもしれません。これの場合、失注の理由はそもそも営業アプローチの方法を誤ったことです。
相手が必要としている情報を的確にとらえて提供し、適切なタイミングで売り込みをかけていくのは営業力そのものですが、単に多く接点を持ったから、押しまくったから成約につながるというものではありません。
失注分析がなぜ必要なのか?
失注分析がなぜ必要なのか、おそらくほとんどの方はすでにイメージされていると思います。同じ理由で失注を繰り返さないため、そして営業活動の質的向上を目指すためです。
「失敗は成功の母」という言葉の通り、人は成功体験だけではなく失敗体験からも多くのことを学びます。失注を食らってしまったら何が足りなかったのかを分析し、正確に知ることで次に同じ失敗を繰り返さなければ、その失注も成長のために必要なプロセスのひとつだったと解釈することもできます。
ビジネスの改善にPDCAを活用するのは基本中の基本ですが、失注分析はこのPDCAのうち「C(Check)」に該当します。失注の理由が分かれば次の「A(Action)」に改善策を盛り込むことができるので、営業活動はひとつ成長します。
この失注分析をさらに営業サイドの資産としていくには、本人だけがその気付きを持っておくのではなく、何らかの形で社内共有することも重要です。他の営業マンの失注を他山の石として他の人が認識しておけば、全社的にPDCAサイクルを回すことができ、さらなる営業活動の成長が期待できます。
まとめ
失注分析の重要性を十分認識していただいたと思いますが、ここで重要になる大前提があります。それは、失注分析の重要性を社内の全員が理解し、共有することです。個々の営業マンにとって失注は恥ずかしいことなので共有することに抵抗を感じるかもしれませんし、バイアスのかかった情報になってしまう恐れもあります。
それでは正確な情報を集めることができず、失注分析の結果も誤ったものになってしまいます。失注理由を集める手順を社内共有し、浸透させる努力が必要です。意識を高めることによって失注の理由をより深堀りできるようになるので、営業改善のPDCAは質的に大きく向上します。